2024年からNISA制度が改正されることになり、運用資産の見直しをかねて投資商品(投資信託)の性質をエクセルを使って調べました。日次変動に関しては短期(2022年4月1日から2023年3月31日まで)、月次変動に関しては中長期(2016年3月から2023年2月まで)の過去データに基づいて種々の統計量を計算しました。
アセットクラスには、株式のほかに、債券、REIT、コモディティなどがあります。長期的な視点で資産を形成しようとするとき、どのような資産配分(アセットアロケーション)で投資をするのか決めることは悩ましい問題です。
投資に絶対はないと言いますが、過去のデータに基づいてどのようなリスク&リターンになるのかを確率・統計的に検証することはできます。それで未来を予測することはできませんが、数値的データによる裏付けは投資戦略を決めるうえでの手助けになるでしょう。
- 計算に用いた投資信託
- 7年間の運用結果(バックテスト)一括投資の場合
- 月次変動の平均値・標準偏差・最大値・中央値・最小値
- アセットクラスの相関係数
- 7年間の運用結果(バックテスト)ドル・コスト平均法の場合
計算に用いた投資信託
執筆者はみずほ銀行のインターネットバンキング経由で資産運用をしており、アセットマネジメントOneの「たわらノーロード」シリーズを主に利用している関係で、各アセットの計算は以下の投資信託の過去データに基づいています。いずれもインデックス連動型の投資信託なので、細かい誤差を除けば多くのインデックス連動の他の投資商品にも当てはまるかと思います。
アセットクラス | 投資信託銘柄 | 信託報酬率(%) |
---|---|---|
国内債券 | たわらノーロード国内債券 | 0.154 |
先進国債券 | たわらノーロード先進国債券 | 0.187 |
国内株式 | たわらノーロード日経225 | 0.143 |
先進国株式 | たわらノーロード先進国株式 | 0.09889 |
新興国株式 | たわらノーロード新興国株式 | 0.1859 |
国内REIT | たわらノーロード国内リート | 0.275 |
海外REIT | たわらノーロード先進国リート | 0.297 |
※たわらノーロードは一部商品で2023年4月7日付で信託報酬率を引き下げます。掲載しているのは引き下げ後の値で、過去データに適用されていた値ではありません。
7年間の運用結果(バックテスト)一括投資の場合
各アセットの投資信託に100の金額を2016年3月に一括で投資して、そのまま2023年2月まで保有したとしたとき、投資した額は以下のようになっていた計算になります。
ここで「均等配分」は7つのアセットクラスに均等に配分して2016年3月時点で総計を100としたものです。その後はいわゆるリバランスは行わず、そのまま保有し続けたものとします。それぞれの年利回り・月利回りは次の通りです。
価格推移は以下のようになります。各線の色は表のなかのアセットクラスの背景色にそれぞれ対応しています。
コロナショック後からの急激な反発が一見してわかります。特に先進国株式の伸び率が顕著です。他方で国内債券・先進国債券の変動の少なさも目を引く特徴です。
月次変動の平均値・標準偏差・最大値・中央値・最小値
月々の騰落率の統計量は以下の通りです。
各アセットクラスの月次変動率の平均値(期待リターン:縦軸)と標準偏差(リスク:横軸)をプロットしたものが次の図です。各点の色は表のなかのアセットクラスの背景色にそれぞれ対応しています。
おおむねリスクとリターンが線形の関係にあることがわかります。すなわち、高い期待リターンには高いリスクが伴うこと(ハイリスク・ハイリターン)が定性的に理解できます。
月次変動率の度数分布の箱ひげ図とヒストグラムもあわせて示しておきます。
いずれのアセットについてもひとつ山のほぼ左右均等な分布をしていることがわかります。
アセットクラスの相関係数
各アセット同士の相関係数は以下の通りです。右上三角は短期(日次変動、期間:2022年4月1日から2023年3月31日まで)、左下三角は中長期(月次変動、期間:2016年3月から2023年2月まで)の過去データに基づいて計算しています。
各セルの背景色で、緑色は強い正の相関(相関係数:0.7~1.0)、黄色は弱い正の相関(相関係数:0.2~0.7)、白色は無相関(相関係数:-0.2~0.2)です。国内債券の相関の低さが目を引きます。
7年間の運用結果(バックテスト)ドル・コスト平均法の場合
上の試算では、一括投資をした場合にどのような結果になるかについて調べました。次に、毎月一定の金額で投資商品を購入するドル・コスト平均法で投資した場合について調べてみます。最終的な投資元本が一括投資の場合(100)にほぼ一致するように、毎月1.2の金額を84ヶ月(7年)にわたって月々投資したとします。バックテストの結果は以下のようになります。
ここで黒実線は投資元本です。コロナショックで一時的にかなり落ち込んだ先進国リートが、ドル・コスト平均法によって国内株式と同じくらいのパフォーマンスになることを示していて、一括投資の場合との違いが顕著に現れています。均等配分の値動きのマイルドさも特徴的です。
いかがだったでしょうか。今回は投資商品のリスク&リターンについて考察してみました。資産分散(アセット・アロケーション投資)の効果、時間分散(ドル・コスト平均法)の効果を理解する一助になれば幸いです。
キーワード:エクセル、投資