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日経225とTOPIXの比較(インデックス連動型投資信託に基づく)

2024年からNISA制度が改正されることになり、運用資産の見直しをかねて投資商品(投資信託)の性質をエクセルを使って調べました。前回の記事

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では、種々の統計データ、そして一括投資法またドルコスト平均法の場合でのシミュレーション結果を示しました。今回は、日経225およびTOPIXに連動する投資信託について少し調べてみます。

投資に絶対はないと言いますが、過去のデータに基づいてどのようなリスク&リターンになるのかを確率・統計的に検証することはできます。それで未来を予測することはできませんが、数値的データによる裏付けは投資戦略を決めるうえでの手助けになるでしょう。

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日経225とTOPIX

日経225(または日経平均株価)もTOPIX東証株価指数)も、どちらも日本の株式市場を代表する指数(インデックス)です。ニュース番組では毎日、これらの指数の終値が報じられ、大きな値動きがあったときなどは番組内で取り上げられることもしばしばです。

TOPIX東京証券取引所プライム市場の(原則)全銘柄(2,169銘柄:2022年8月31日時点)の時価総額加重平均株価で与えられるのに対し、日経225は日本経済新聞社が選定した225銘柄の修正単純平均株価によって算出されます。当然ながら、これらの指数では各業種の構成比率もいくぶん異なります。

日本円建てでインデックス投資をするうえでは国内株式にも資産配分をしたいわけですが、日経225とTOPIXではパフォーマンスにどれくらいの違いがあって、どちらがより優れているのでしょうか?結論を言ってしまうと、やや日経平均の方が優れているようですが、ほとんど差はないと言って良いようです。本記事では、過去のデータに基づいてそれを考察してみたいと思います。

計算に用いた投資信託

本記事の内容は以下の投資信託の過去データに基づいています。日経平均に連動する投資信託については、比較のために3つ扱っています。

指数 投資信託銘柄 信託報酬
TOPIX たわらノーロードTOPIX 0.187%
日経① たわらノーロード日経225 0.143%
日経② 日経225ノーロードオープン 0.55%
日経③ iシェアーズ国内株式インデックス・ファンド 0.3575%

 

基準価額の推移

日次変動については期間:2022年6月7日〜2023年6月7日、月次変動については期間:2017年3月〜2023年5月で基準価額の推移をプロットしました。なお比較のために、それぞれ最初のデータを10,000として基準にしています。

日次変動については日経平均に連動する3つの投資信託はピッタリ同じ値動きをしていることがわかります。その一方でより長期間の運用結果となる月次変動のほうでは、3つはおおむね同じ動きをしてはいますが、日経②が他に比べて追従できていない部分が生じており、ジリジリと差ができていることが見てとれます。

このことからわかるのは、たとえ同じインデックスに連動する投資商品であっても、長期的な投資を考えている場合には商品の選定を慎重に行わないといけないということでしょう。

本題のTOPIX日経平均の比較ですが、直近1年で見ればTOPIXの方がやや良い結果ですが(もっとも、これはいつを基準日に設定するかに大きく依存します)、中長期的には日経平均の方がやや優れているように思えます。そして、日経平均の方が総じて値動きが大きいことが見てとれます。次に、この観察を定量的に裏付けるためにいくつかの統計量を求めてみます。

 



騰落率の中央値・平均値・標準偏差相関係数

日次変動・月次変動それぞれの各データについて直前のデータ(それぞれ、前日・前月)からの騰落率を求め、その統計量を求めました。

TOPIXの月次騰落率の標準偏差が4.0、日経平均が4.6程度なので、日経平均の方がリスク(値動き=標準偏差)が大きいことが定量的にわかります。ただ、リスクの増加以上に期待リターン(騰落率の平均値)の増加が見込めることが以下の計算から示されます:

 \qquad \displaystyle{r_{\text{risk}}=\frac{\sigma_{\text{日経}}}{\sigma_{\text{TOPIX}}}=\frac{4.6}{4.0}=1.15\quad<\quad r_{\text{return}}=\frac{\rho_{\text{日経}}}{\rho_{\text{TOPIX}}}=\frac{\frac{0.916+0.863+0.897}{3}}{0.725}=1.23}

よってTOPIXよりも日経平均の方がパフォーマンスにやや優れていることがわかります。

さて日経連動の3商品ですが、いずれも標準偏差はさほど変わらないにも拘らず、日経②の期待リターン(騰落率の平均値)が他に比べて見劣りします。これは上の価格推移のプロットで見てとれた乖離が、数値として如実に現れているのだとわかります。

相関係数は右側の表で、右上三角が日次変動、左下三角が月次変動に基づく計算値です。TOPIX日経平均相関係数は約0.95と、やはり非常に強い連動性を示します。また、同じ指数に連動する投資信託同士については、誤差の範囲で1.00となっています。




毎月定額積み立てした場合(ドルコスト平均法

さいごに日経平均TOPIXそれぞれを毎月一定の額だけ積み立てした場合の運用額の推移をプロットしてみます。積み立てた額は最終的に元本が1,000,000となるように設定しました。

日経平均TOPIXで差がついている時期もありますが、この期間(2017年3月〜2023年5月)では、最終結果はほとんど変わらないと言って良いのではないかと思います。

ちなみに、ドルコスト平均法の場合には含み益率が30~40%ほどですが、同じ期間(2017年3月〜2023年5月)で一括投資をしたとすると、上で示した月次変動の推移の結果からTOPIXの場合で含み益は約60%、日経平均の場合で75~80%となっていたことがわかります。

さまざまなインデックスがあるのでついいろいろと目移りしてしまいがちですが、大切なのは、ベターな投資商品を選び、一旦決めたらあとは投資元本を増やす努力をしてじっくり待つことではないでしょうか。





キーワード:エクセル、投資、日経平均TOPIX

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